隠れるから魅力的なのですよ!
「おまえ、ちゃんと読んでいるのか?」
「はい」
「見当外れにも程がある」
「ほんとうに読んでいるのか、と訊いているのだ」
「はい。行間を読んでおりますんで…」
「何が書いてある?」
「虚でございます」
「嘘だ!そこには何も書かれておらんぞ」
「浮世は嘘にまみれております」
「分からんぞ!愛なしに何が浮世とぬかすか」
「とんでもございません」
「愛に溢れております」
「なんと!」
「はい。虚部と実部の虚の側には愛があります」
「くだらぬ。空想過剰に過ぎぬ」
「いいえ。大抵は見えるものしか眼に映らぬものです」
「見えるもので十分ではないか?」
「なりませぬ。見えないものが世界の大半を占めます」
「勝手にするがいい」
「では、二乗して見えるようにいたしましょう」
「はじめからそうしたらいいではないか?」
「隠れるから魅力的なのですよ」