逆レコード

そのレコードプレイヤーは一風、変わっていた。スピーカーはどこから見ても人間の耳にしか見えない。それが小さくつぶやくようにして、見方によっては、多少いらいらしながらレコードを回している。

「何だ?音をださないレコードプレイヤーなんて」とこちらも吐き捨てるように独り言をいう。

「聞いてるんだよ」とそいつは応えた。

「逆だろう!お前は音楽を奏するのだ」

「下らない噂に聞き飽きた」

「仕方ないじゃないか」

「だから今はもうずっとバッハばかり聴いている」…